龍馬がゆく〜SBG株と共に〜

龍馬が、SBG株命で億り人なるまでのドラマです 億り人なっても酔いしれて書きますよ

だから孫正義様は、信じれます

窮地にありながら、会見で笑顔を絶やさない孫正義氏。どんな思考回路の持ち主なのか、作家・井上篤夫が整理した。攻めと守り。そのバランスを重視する経営者だと分かる。



7割の勝率があれば突入せよ


 孫氏が26、27歳の頃に基本形を作った「孫の二乗の兵法」。「孫子の兵法」に持論を加え、漢字25文字を5×5マスの文字盤にはめて表現した戦略論だ。これは孫氏の人生哲学で、経営哲学にも通じる。その中でも孫氏のオリジナリティーが強く出ているのが、「頂情略七闘(ちょうじょうりゃくしちとう)」。ビジョンを示す1行だ。


 「頂」は目指すべき場所である。ビジョンそのものと言い換えられる。「自分の登るべき山を決めたら、自分の人生の半分は決まる。勝利が半分決まる。ビジョンはものすごく大切です」。


 「情」は情報。情報の収集と分析だ。「情報収集して、ビジョンを描く。そしてビジョンを思い描いたら、本当にそれが正しいか、情報の収集と分析を徹底的に行う」。新規事業においても、投資においても、孫氏は何であれ、行動を起こす前に必ず、徹底的に情報収集を行っている。


 「略」は戦略。「死ぬほど考え抜き、絞り込まれたものが戦略だ」。


 そして次に「七」。「この7という数字がキーナンバー」だと孫氏は言う。「これが9割だったらいいかというとそうではない。9割の確率になるまで準備すれば手遅れになることも多い。敵も準備ができてしまう。だから遅過ぎにならないように、若干、早め早めに攻めていく」。


 だからといって、早ければいいというものでもない。「5割や6割の勝算のところで手を突っ込んでいくと、一か八かになり過ぎる。だから7割の勝率のところで進んでいく」。


 この7は、その裏に3の意味も含んでいる。退却する勇気のことである。「考えに考え抜いた上での執念の入った7割」と孫氏は言う。3割以上のリスクを冒してはいけない。失敗した場合でも、一目散に逃げれば全滅しない。「トカゲのしっぽも3割くらいなら切ってもまた生えてくる。半分切ったらはらわたまできて死ぬ、ということです」。


 孫氏は本当はすごく用心深い。孫氏の弟で、起業家でもある孫泰蔵氏は、兄の行動原理を絶妙な比喩で説明する。「兄はとても用心深いです。石橋を渡る前に、これでもかというくらいに何度もたたく。ほとんどは渡らない、でも、いったん渡ると決めたら、ダンプカーで渡る」。


 孫氏は言う。


 「意地でやるヤツはバカだと思え」


 「退却できないヤツはバカだと思え」


 「退却できないヤツはケチだと思え」


 孫氏は笑みを浮かべて言う。


 「あっちこっちに手を出すけれども、退却しても本丸は守れるようにしています。それなら後で、もう一度攻めていける」


 「だから孫は懲りないと言われるかもしれないけれども」。孫氏の眼は笑ってはいない。退却を軽んじる者に何が成せるか、と語りかけているようだった。


リスクと危険


 孫氏は「リスク」と「危険」を明確に分けている。弟の泰蔵氏にもこう話したことがあるという。


 「危険というのはある。その中でマネージできる危険、危険の最大被害が見積もれるものだけをリスクと呼び、見積もれないものは全部危険だ」


 従って、「リスクは取っていいけど危険は取っちゃいかん」。ここで言う危険を英語にすれば「Hazard」となるだろう。リスクとハザード。その違いをはっきりと認識しなくてはならない。


 最大被害が見積もれないまま、のるかそるかで勝負に出る行動を、豪快だとか、すごい、勇気があると褒めたたえることを、孫氏は戒める。「1回ぐらいはラッキーで何とかなるかもしれない。しかし、ビジネスは何回も勝負していかなければいけない話なんだから、その調子でやったら、どこかで終わる」


 リスクと危険の境目は大抵曖昧である。はっきり線引きできるものではないが、孫氏は、曖昧なままにはしない。「兄の場合は、分からない部分を徹底的に詰めにいくんです」。泰蔵氏は証言する。


 リスクと危険の境界線がぼやけていると感じれば、「その場で、何時であろうと、あらゆる人に連絡を取る。『Hey Jack!(ヘイ、ジャック)』などと言って、世界中の人々に電話をして疑問点をぶつける」という。ジャックとは、中国アリババ集団創業者のジャック・マーのことである。


 疑問をぶつける相手は「超一流」と決めている。超一流の頭脳から最新の情報を得た上で、リスクか危険かを判断する。決して曖昧にはしない。


 孫氏の真骨頂はこうした綿密な調査の末に、常人には危険としか思えない賭けの最大被害を見積もってしまうことだろう。最大被害が見積もれるなら、もはや危険ではない。防御の構えが取れる。よって危険がリスクに変わる。


 「I still don’t understand.(まだ分からない)」、孫は何度も、その言葉を周囲に繰り返す。強じんな精神力が、ハザードをリスクに変える。


一流攻守群


 ビジョンのために命を懸ける。命を懸けるからには、無策ではあってはならない。戦略が必要だ。その戦略とは、いかなるものであるべきか。孫氏の答えは、「一流攻守群」。「孫の二乗の兵法」を構成する25文字の中の5文字である。以下、孫氏の言葉と共に説明する。


 【一】ナンバーワンへのこだわり。


 「小学校ではほとんど1番しか経験していない。1番でないと気持ちが悪い」「やれるはずと思った分野は絶対に1番になると決める。圧倒的ナンバーワンにこだわる」「いかなる分野でも、1番になれる道筋を見つけてから手を出す」「2番は敗北だと思え」「2番はまだ途中。やりきれ」。


 だが、1番になることが目的ではない。「圧倒的ナンバーワンになって初めて、その本質的な意義を長く享受できる」「1番になれば余裕が生まれ、チャレンジできる。新しい技術開発で、お客様に対してより優しくなれる。本当の責任を持ちたい」。


【流】時代の流れを見極めること。


 「半歩先、1歩先、3歩先。流れの先を読んで仕掛けていく」「ど真ん中のさらにど真ん中を狙っているつもりです」「物事を難しく考えることはない。わざわざ川の流れに逆らって泳ぐへそ曲がりは事業家として失格ということです。へそ曲がりは事業家には向いていない」


 【攻】攻める。


 「チャレンジしないことが悪」「地に足がついたことをやっても革命にはならないんです」


 【守】守りとは、財務であり、キャッシュである。「ベンチャーが潰れる原因は資金繰りが、ほとんどだ」「攻めるために資金を確保すること」「資金繰りで倒れないようにしながら、なおかつ攻める」「攻めと守りを同時に行っている」。


 【群】個に頼らない。1つの商品、1人の人、1つの事業分野に頼らない。「シングルブランド、シングルビジネスモデルでは300年は続かない」。

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